今の日本はいろいろな問題を抱えていますが、その背景には共通の性質があるように私には思われます。ここでは3つ挙げてみましょう。(なお、さっき思い付いたことなので、あまり根拠はありません。あしからず)
- 現状維持という病
- ゼロリスク指向という病
- 強者・大衆・既得権に迎合する病
現状維持というのは、今までこうだったから変えたくない、これからも同じでいいだろうということです。変えない方が良いこともありますが、環境の変化に対応できなくなってしまうこともあります。
ゼロリスク指向というのは、リスクがあってはならないとする非現実的な考え方です。ものごとには良い面も悪い面もあるのが普通ですが、それを受け入れられない。少しでもリスクがあるなら受け入れられないという、硬直化した思考にとらわれると、何もできなくなってしまいます。リスクがあるなら、それを抑える方策を立てれば良いのですが。しかもしばしば、客観的・論理的な分析ではなく、事実に基づかない印象・イメージだけでリスクがあると認識されがちです。
強者・大衆・既得権に迎合するというのは、何か物事を是正しようとしたときに、それに反発する強者や既得権者に逆らえない、迎合してしまうということです。今日の大衆消費社会では大衆も一種の強者ですから、ここに含まれます。
これを現実の問題に当てはめて検討してみると、以下のようになります。
例えば、震災被災地の瓦礫の受け入れの問題。放射能が怖いという論調が出てくる(ゼロリスク指向)。声の大きい大衆に逆らえない(強者・大衆・既得権への迎合)。結果として、現状維持となってしまい、処理が進まない。
例えば、自転車の歩道走行の問題。自転車は車両であって車道を走るものなのに、歩道を走っているので事故が起こっている。これを改めようとすると、本当は自転車は車道を走った方が対自動車でも視認性が高まって安全であるのにかかわらず、自転車が車道を走るのは怖い・危険だという主観的印象的なイメージによる論調が出てくる(ゼロリスク指向)。さらに、車道を我が物顔で走ったり路上駐車したりして既得権を得ている自動車運転手や、車道を走ったことのないママチャリ市民の声に逆らえない(強者・大衆・既得権への迎合)。いま自転車が歩道を走っているので、現状維持でいいだろうということになる。何も改善されない。
例えば、文字コードの問題。JIS X 0208の問題を解消するJIS X 0213という規格ができたのに採用が進まない。新しい規格を採用するのは面倒だ、考えたくない、という現状維持指向。新しいものを採用してトラブルがあったらどうするというゼロリスク指向。大手OSベンダが採用していないのだからいいだろうという、強者・既得権への迎合。結果、従来の問題が温存される。
これらのほか、消費税でも年金でも、同じような構造を持つ問題が多いのではないかと想像します。
こうした病へのひとつの処方箋は、本当に大事なことは何か、本質的なことは何か、普遍的な価値観に合致するか、をよく考えることだと思います。現状維持という枠組み、ゼロリスクという制約、強者の既得権を、いったん前提から外して、本当に大事なこと、本当のこと、普遍的に価値のあることを考えてみる。
といっても、これまでなじんだ考え方が一朝一夕に変わることはないでしょうから、本当に大事なことを考えるトレーニングをしていくことが必要なのだと思います。