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隠れた理念

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この記事は単なる思い付きなので眉に唾をつけた方がいいかもしれません。

国際的な標準において各国のニーズを満たすということに関して、2つの異なる理念があるように思われます。

ひとつは、各国がそれぞれ自分のいいように要件を設定して、他者が容喙せず自己責任で決定し、それらを仲良く併存できるようにするという考え方。日本は日本で自分のことをやりますから、中国は中国で、タイはタイで、インドはインドで決めてください。それぞれで決めたことを尊重しましょう、という考え方。各自が自分の庭を綺麗に整備して、結果的にみんな幸せになるという感じ。

もう一方は、アメリカ企業のグローバリゼーションみたいに、俺たち主導で世界の要件を満たす単一のものを作ってやったからみんなそれに従え、というパターン。ブルドーザーでガーッと地ならししてしまうみたいに。

おそらく多くの日本人になじみやすいのは前者だと思います。しかし、なんとなく、後者の方が勢いがあるような感じがする。

前者は軋轢が少ない一方、スピードにおいて劣るかもしれない。また、自分がうまくやっているように他国もうまくやっている筈だという前提に乗っかっているので、ある意味、自分以外のことは他人任せ的な部分がある。一方後者は、企業が世界規模で事業を進めていくには都合がいいかもしれないけど、自分というちっぽけな存在が世界中のことを決めてやるんだというような、独善的な弊害がある。

どちらがいいということは一概にいえないのだけども、標準という同じ言葉で言い表していても、理念の点で人によって違いがあるかもしれないということは、意識されて良いように思います。

私は最近、パソコンで日本語を入力するのに月配列という仮名配列を使っています。

この配列は、仮名の並びは新JIS配列(JIS X 6004)から、「中指シフト」というシフト方式は花配列から、それぞれ影響を受けています。

月配列の良い点のひとつとして、特別なキーボードを必要としないことが挙げられます。広く出回っている日本語キーボードでも勿論かまいませんし、ANSI配列(英語キーボード)でも使えます。私はHappy Hacking Keyboardで月配列を使っています。Linuxでよく使われる日本語入力ソフトウェアのSCIM-Anthyでは月配列がメニューに用意されており、選択するだけで月配列で入力できるようになります。(Windowsの場合はキー配列を変えるソフトウェアを導入する必要があります)

手元にある普通のキーボードがそのまま使えて、なおかつ打鍵数はローマ字入力の4分の3程度とされています。効率的な文字入力に興味のある人にとっては、検討する価値のある配列だといえます。

さてこの月配列の前身のひとつが新JIS配列(JIS X 6004)であるわけですが、この規格は従来のJIS配列(現在多くのキーボードに刻印されている仮名配列です)の反省点を踏まえて研究を重ね、どのような配列が打ちやすいのかを調査した上で設計し、1986年に規格化されました。ところがいろいろな理由があってか普及しなかったため、1999年にあえなく廃止となってしまいました。

しかし、廃止されてそれで終わりではありませんでした。新JIS配列の設計の良さを認めるキー配列マニアのような人たちがネットの掲示板等で議論を重ねた結果、花配列の中指シフト方式と組み合わせることによって、新JIS配列は月配列という新たな形によみがえり、新たな利用者を獲得することができました。月配列の発祥の地は2ちゃんねるです。

短期的にはたとえ商業的な成功を収めることができなかったとしても、合理的な設計が文書化されて残っていればいつか再評価される日も来うるのだということを、新JIS配列と月配列の歴史は物語っているように思えます。

参考になるサイト:

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