「キュレーション」なる語について

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DeNAのキュレーションサイトWelqの大炎上に端を発して、様々な「キュレーションメディア」の問題が注目されています。他のサイトから著作権無視でパクった文章や写真をつなぎ合わせただけのいいかげんな記事をありえない激安報酬のクラウドワーカーに大量生産させてSEOテクニックでGoogle検索上位を独占している、といった問題です。

ここではこの「キュレーション」なる語に注目してみます。キュレーションサイト問題を扱ったネットの記事では、キュレーションというのは本来は高度な知識を要するものなのだ、といっていたりしますが、それはどれくらい本当か、というのも問題意識にあります。

一般向けの辞書を引いてみる

研究社の新英和中辞典では、curatorという単語に、「(博物館・図書館などの)館長、主事」という説明が与えられています。いわゆるキュレーションというのは、この語から逆成した造語ではないかと思います。というのは、同辞書にはcurationという単語は立項されていないからです。同じく学習者向けという位置付けの、英英辞典 Longman Dictionary of Contemporary English 4th Editionでも同様です。

おそらく、「curateという動詞があってそこからcurationやcuratorという名詞ができた」となんとなく思っている人がいると思いますが (私は最初そう思った)、辞書を引いて分かるところでは、そうではありません。

curateという語は動詞でなく名詞で、キリスト教の教会の役職を表す言葉のようです。英和中辞典では「(教区の)副牧師」「助任司祭」、Longmanでは「a priest of the lowest rank, whose job is to help the priest who is in charge of an area」とされています。ラテン語からきており、cureと関係のある言葉です。

図書館でオックスフォード英語辞典 (OED) 第2版をひいてみると、curate, curatorとの並びにcurationという語もあります。これも教会関係の語で、cureすることが中心的な意味になります。これらの語の説明のうち、博物館の管理業務のような現代的な意味はcuratorの語の項目の最後に記されているのみです。curationという語にはそのような意味は記されていません。

Digital curationという用法

Google Scholarを検索してみると、2000年代からdigital curationという語が学術論文で使われるようになったようです。きちんと調べたわけではなくいくつかの記事の梗概を見ただけですが、これは蓄積されたデジタルコンテンツを将来にわたってアクセス可能にするために維持管理していく活動を指しているようです。おそらく、curatorという語から、博物館の収蔵品の管理という意味合いに基づいて派生した語法ではないかと思います。

ここには、ネット検索で出てきたものを切り貼りしてサイトを作るという意味はありません。

そして今問題の「キュレーション」は

そこから先の展開はまだ追っていない (というか、どういうふうに誤解ないし我田引水したのか、先が読める気がして興味が潰えた) のですが、多分ウェブ業界の人がさらに独自の意見を加えて今の「キュレーションサイト」につながったのだろうと推測します。

もっとも、何も維持管理してなくてウェブの検索結果をコピペしてくるのが「キュレーション」というのはかなり無理があるように思えます。少なくとも何も「cure」していない、むしろ損なっているものの方が多いのではないでしょうか。

おわりに: 辞書くらい引こう

言葉について何か言いたいなら、まずは辞書を引くことだと思います。本当はどのような性質の辞書かということもあわせて考慮する必要があるのですが、それにしても辞書の一つにもあたらないで分かったつもりでいるよりは、何でもいいから手近な辞書を引いた方がずっと得るところがあります。

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