2016年4月アーカイブ

前野直彬『漢文入門 』(ちくま学芸文庫)を読みました。

本書は1968年に刊行された本の復刊だそうです。

書店でなんとなく惹かれる雰囲気があって手に取ってみたのですが、まず「まえがき」にすっかり引き込まれました。

くりかえして言うが、「漢文」を宣伝するためでもなく、「漢文」の学力を増進させるためでもなく、ただ「漢文」とはどのようなものかということを明らかにするだけの目的で、私はこの本を書く。

漢文とはどのようなものだったでしょうか。漢文の具体例として学校の教科書に載っているようなものを思い浮かべることは簡単ですが、きちんと定義しようとするとそう単純ではありません。

私自身は今のところ漢文を読む必要性はあまりないのですが、漢字、特に日本語におけるそれには興味があります。漢字についての理解を深めるのに漢文の知識が役に立つことは改めて説明する必要はないでしょう。

漢字に興味があって、上のまえがきの一節に何か感じるところがある人は、きっと本書を読んで損はないと思います。あまり厚くないし、前提条件として専門的な知識も必要ありません。

東京国立近代美術館のツイッターを見ていたら、人名表記に気になるところがありました。

「芹沢けい介」と、「けい」だけ平仮名になっています。

これは実は、「銈」という漢字です。JIS X 0213の第3水準、面区点位置1-93-14にあります。EUCではFDAE、SJISではEF4Dという2バイトのコード値になります。UnicodeではU+9288に相当します。

JIS第3第4水準に対応した環境では「芹沢銈介」と全部漢字で表記できます。今この記事を書いているMac OS Xでも「せりざわけいすけ」から漢字に変換でき、標準のエディタであるテキストエディットでUTF-8でもShift_JIS-2004でもテキストファイルに保存できます。

Emacs上で動く仮名漢字変換プログラムSKKのJIS第3第4水準辞書SKK-JISYO.JIS3_4にもこの人名は入っているので、SKK/Emacs上ではOSを問わずごく普通に漢字に変換できます。

東京国立近代美術館も実はウェブサイトではこの人名を漢字で表記しています。例えば今回の企画展のウェブサイトでそうしています。(芹沢銈介のいろは―金子量重コレクション)

なぜツイッターでだけ平仮名を使っているのかは分かりません。ツイートしている環境によるものかもしれませんし、あるいは単に、一般的でない漢字だから読み手が読めないかもしれないという考えによるものかもしれません。

さて当ブログでは以前もこの人名が出てきたことがあります。北海道新聞のウェブサイトにこの人名が出てきたときのことです。このときは問題の第3水準漢字が外字扱いされていました。

この題から分かるように、芹沢銈介は人間国宝に指定された著名な染色工芸家です。広辞苑にも掲載されています。以前から度々書いていますが、文化的な活動にはJIS X 0213の文字がしばしば使われます。

Unicodeには10万を超える文字が登録されていますが、いつでもどこでも全部の文字が使えるという想定には無理があります。「いつでもどこでも」使える文字のベースはかつては1978年に制定されたJIS X 0208の文字でしたが、今はJIS X 0213の11,233文字を基準とするのが適当です。

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