ハングルが隠す漢字

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韓国の文字コードを調べたことのある方は、「組合せ型(Johab)」という言葉に出会ったことがあると思います。

韓国語のJohabという言葉を日本語訳すると「組合せ」になるのだなというふうに理解していました。それはそれで一応正しいともいえますが、物事の順序からいうと若干違っていたようです。

というのは、Johabというのは、日本語の「くみあわせ」を漢字で書いた「組合」をそのまま韓国語読みしたものだそうだからです。これは意外でした。朝鮮の固有語ではないということです。(なお、ここで「朝鮮」は半島全体を指す地域名称として使っています)

日本語で音読みされる漢語が朝鮮にもあって現地流に発音されるというのはいかにもありそうですが、訓読みされる漢字、つまり大和言葉に漢字をあてたものが朝鮮半島で現地流に読まれて使われているものがあるわけです。

実はこうした言葉は結構あるということが、豊田有恒『韓国が漢字を復活できない理由』に記されています。著者は昔から度々韓国に渡って現地の人と交流のある作家です。

例えば、支払いのことを韓国語でチブルというのですが、これは漢字の「支払」を朝鮮流に発音したもので、文字通り支払いという意味で使われているそうです。そのほか、同様の日本語由来の言葉として、出口、手続き、売出、などがあるそうです。

近代以降、西洋語に合わせて日本で造語された漢語が中国に渡ったことはよく知られています。こうしたものも朝鮮で使われていますが、上のような訓読みのものが朝鮮語化されているのはあまり知られていないと思います。

漢字で書かれていれば見て分かりますが、今は主としてハングルで書かれるので、出自が分からなくなっているわけです。

韓国政府はこうした日本語を含めた外国語由来の言葉を朝鮮の固有語で置き換えようという政策を何十年もやっていて、置き換えられたものも多数あるそうですが、すっかり定着していたり派生語を作り出しているようなものはなかなか言い換えが進まないということです。

日本語由来のものを取り除こうとしているのはお国柄として(?)想像がつくのですが、ほかにも英語からきているものも避けようとしているそうです。例えばサッカーは日本語の「蹴球」を朝鮮音で読んだものになっています。日本語が嫌なら英語でサッカーでもフットボールでもいいと思うのですが、英語にするのもそれはそれで嫌なのかもしれません。

韓国が日本の影響を取り除きたいというのはわかりますが、それをいったらもっと昔に漢に直接支配されて多大な影響を受けたのはいいのかという議論もあり得ます。大和言葉の「やま」や「かわ」にあたる朝鮮の固有語は漢語に押されて今やなくなってしまったそうです。言葉の純粋性を追求するのは現実的に無理があるでしょう。まあ、英語からの外来語ばかりありがたがる日本人はもう少し韓国の姿勢を見習って昔からの日本語を大切にしてもいいのではないかと私などは思いますが...。

本書の次のくだりは、漢字の利点を示しています。

韓国で三月に開催された核セキュリティー・サミットでは、核安保頂上会議(ヘクアンポチヨンサンフエーイ)という漢字に相当するハングルが、垂れ幕に書いてあった。漢字で書いておいてくれれば、日中台から来た人には読めるし、意味も判るのである。

漢字には短所もありますが、長所もあります。その間でバランスをとって、短所をおさえながら長所を生かすような運用をしていく必要があるのでしょう。

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