文字が難しいのか、言葉が難しいのか

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外国から来た人が医療や介護の資格を取ろうとするのですが、しかし資格試験に出てくる専門用語の漢字が大変難しいので、知識や技能があってもなかなか合格できない、という話を過去何度か聞いたことがあります。最近またテレビで見ました。

こういうことが話題になると、漢字なんていっそのことやめてしまえという極端な意見がネットに出てくることもあります。まあ、ネットに出てくる意見が極端なことは珍しくないですが。

最近見た番組では、漢字に振り仮名をつけて対応したという話でした。それはそれでいいことでしょう。

ただ、この手の話で気を付けなければいけない点として、難しいのは文字なのかそれとも言葉なのか、ということがあると私は思います。

例えば、「腋下」という字面は、特に外国語として日本語を学んでいる外国人には、難しいと感じられるかもしれません。それなら、「漢字は難しい、けしからん」といえば済む話なのかといえば、そうではないと思います。

仮にこれを「えきか」と平仮名で書き直したらどうでしょうか。難しい漢字を知らなくても、確実に読めますね。でも、意味は分からないのではないでしょうか。文字が読めても、意味が分からないのではしようがない。

この言葉は、「わきのした」という意味です。「わきのした」という言葉はやさしいですが、「えきか」は、何のことか分からない人の多い、難しい言葉といえるでしょう。

つまり、表記に用いる文字の問題もさることながら、その文字が表す言葉の問題が大きいのではないか、ということです。漢字が難しいというのはそうだけども、使われている言葉自体がそもそも難しいのではないか、と思うわけです。平仮名で書いたって、言葉自体が難しいのなら、依然難しいわけです。

さて、先ほど、漢字は難しいといいましたが、漢字で「腋下」と書かれたのを見ると、この言葉を知らなくとも、「もしかすると、わきのしたのことかな? ちょっと自信ないけど」と思った人も少なくないのではないでしょうか。どこかで「腋 = わき」というつながりを見た覚えがある人なら、それを手がかりにして「腋下 = わきのした」と類推できるわけです。そうなると、むしろ漢字の方が分かりやすいということもできるでしょう。もちろん、こういう効力を得るためには漢字をたくさん読んだ経験が要るので、初学者向きではないでしょうけど。

英語でも、「使われている文字はやさしいけれども言葉は難しい」ということはあります。

「otorhinolaryngology」という英語をご存じでしょうか。とても難しそうですね。使われているのは中学1年で習った普通のアルファベットだけです。しかし、こうして見ても、意味が、そして読みも、分からないという人が多いのではないでしょうか。

これは耳鼻咽喉科を意味する単語です(実はこのまえ病院の待合室でこの英語を見付けて、なんだこの変な言葉はと思ったので調べたのです)。なぜこんな難しそうなのかというと、ギリシャ語からきているためです。ギリシャ語の、耳、鼻、のど、学問、という言葉をつなげたものからきているそうです。かくいう私もギリシャ語なんて全く分かりませんが。It's all Greek to me! もっとも英語話者もこういう長くて難しい言葉を嫌ってか、"ear, nose, throat" の頭文字をとってENTともいうそうです。

ここで私がいいたいのは、使われている文字が簡単なら言葉自体も簡単とは限らないということです。平仮名だけ、あるいは英語のアルファベットだけでも、難しい言葉というのはある。言語運用を円滑にしていくためには、文字だけの問題なのか、それとも言葉自体が難しいのか、ということも検討する必要があります。

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