美酒と字体

| コメント(0) | トラックバック(0)

岐阜県に行った方から、お酒を頂戴しました。ありがたいことです。

この酒の入ってきた箱に、「飛驒 蓬莱」と書かれていました。これがなかなか面白い。

というのは、たった4文字の中に、83JISの大きな字体変更にかかわる文字が2つも入っているからです。

まず、飛驒の「驒」。これはJIS X 0213の1-94-20にある第3水準漢字ですが、もともとは、JIS X 0208初版の第1水準の領域、34-45にありました。これが83JISの字体変更で「騨」の簡略字体に変更されたのです。その問題を救済するためにJIS X 0213:2000において、1-94-20に元の字体「驒」が追加されたわけです。

もうひとつ、蓬莱の「莱」。これは1-45-73にある文字ですが、JIS X 0208初版では「萊」の字体でした。印刷の活字ではこの字体がもともと一般的だったと思います。それが、83JISの変更によって「莱」の字体に変わってしまいました。その問題の救済のために、JIS X 0213では1-91-06という第3水準の領域に、もとの「萊」の字体を追加したわけです。

83JISのこれらの字体変更は、規格内で同じ部分字体を持つ他の文字と扱いが矛盾しており (例えばJIS X 0208は「彈・弾」等の組を別扱いするので、34-45が「驒・騨」を包摂するとは考えられない)、その意味でもJIS X 0213による救済は必要なものでした。

とはいえ、文字運用の上では、字体が違っても同じ字種であることには注意する必要があります。これらの字体の違いは、手書きと活字の字体の違いと考えられます。手書きで「飛騨」と書かれたものを活字では「飛驒」としてもよいし、活字で「蓬萊」と印刷されたものを手書きで「蓬莱」と書いても差し支えないでしょう。どちらが正式とかいう筋合いではなく、手書きと活字とで形が異なるのは珍しいことではありません。

いただいた贈り物は、酒だけでなく文字も味わい深いものでした。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://yanok.net/yanok/mt-tb.cgi/420

コメントする

最近のブログ記事

『プログラマのための文字コード技術入門』第7刷決定!
拙著『プログラマのための文字コード技術入…
名字の第3水準漢字:「㞍」
先日テレビを見ていたら、人名の名字にJI…
JISの幽霊漢字が大正時代の新聞にあったように見えたという記事
JIS X 0208の幽霊漢字についてT…
Jアラート訓練メールで文字化けとのニュース
一昨日のことですが、中国・四国地方から文…
任俠の第3水準漢字
ユーモラス、と言っていいのか分かりません…

広告