電子辞書の理想と現実

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電子書籍が話題になるよりだいぶ前から、辞書は電子化が進んできました。電子辞書はもうすっかりお馴染みになっています。

電子辞書というと、手帳ぐらいの大きさの専用機として作られているものを思い出す方が多いかもしれません。そういうのも勿論便利です。紙の本を読んでいるときに言葉を調べたくなったら、私も専用の電子辞書を使います。

一方PCで文章を書いているときにはそうした機器を使うのは便利とはいえません。そうしたときは、PCのハードディスクにインストールされている辞書を使います。この記事で話題にしたいのはそちらの形態の電子辞書です。

私はメインに使っているデスクトップのLinux機に、CD-ROMの形で購入した国語辞典と英語辞典を入れて、何かあるとすぐに検索できるようにしています。Linux用にはEBViewというオープンソースの辞書検索ツールがあり、私はこれを活用しています。EBViewはEPWINGというJISにもなっている業界標準の辞書フォーマットを扱うことができます。EPWING形式の辞書データを複数インストールしておけば、それらの辞書をいっぺんに引くことができます。Windows用にも、DDwinやEBWinといったEPWING対応の辞書ツールがあります。

つい先日、久しぶりに新しい辞書を購入してインストールしました。広辞苑第六版です。広辞苑は以前からEPWING形式で辞書を提供してくれているので助かります。EPWINGであれば、Linuxで使えますし、検索ツールも複数あります。アプリやOSが変わってもデータはより長く生き延びると期待できます。

しかしながら、この頃は、EPWING形式で格納されたCD-ROMの辞書があまり供給されない傾向にあるようです(また、EPWINGまわりのフリーなソフトウェアの環境整備も、最近はあまり活発でない印象を受けます)。これは困ったことだと考えています。

どうしてなのかはよく知りませんが、考えるに、先に述べたような専用機としての電子辞書や、PCに同梱される形での供給が増えて、CD-ROMやDVD-ROMの形で販売する重要性が以前よりも減っているのかもしれません。携帯電話やタブレット機器に国語辞書や英和・和英辞典が搭載されていることもあります。はたまた、ウェブのポータルサイトから無料で検索できるようにしている辞書もあります。

また、CD-ROMを出している会社であっても、共通フォーマットのEPWINGでなく、独自フォーマットを用いているところもあります。こうした場合、辞書の検索には専用ソフトが必要になります。これはUNIX系OSの利用者には大変困ったことです。大抵の場合WindowsとMacだけしか対応しないからです。また、Windowsであっても、専用ソフトを用いる場合は他のEPWINGの辞書と一緒に検索することができず、不便です。

専用ソフト込みで販売したい企業にはそれなりの理由があるのかもしれませんが、利用者としては嬉しいことではありません。利用者にとって本当に価値があるのは、お仕着せの検索アプリではなく、辞書データそのものなのです。

独自フォーマットを専用ソフトで扱う形態だと、辞書の寿命がソフトの寿命に押さえられてしまうという問題もあります。Windows 95専用に作り込まれたソフトがあったとしても、Windowsが98、XP、Vista、...と変わるうちに、実行できなくなり、開発元のサポートもなくなったら、内蔵されているデータも埋もれてしまうわけです。データの中身は10年20年と通用するものかもしれないのに、アプリもろとも日の目を見なくなってしまうのは勿体ないことです。

EPWINGのフォーマットそのものが良くできているかどうかは、私はよく知りません (外字がしばしば使われているので、第3第4水準文字コードへの対応は課題の一つでしょう)。それはそれとして、特定企業の占有物でない、誰でも使えるフォーマットであるということが、肝心なことです。

共通フォーマットたるEPWING形式の電子辞書は、確実に、知的作業に資するものです。辞書を供給される方には、是非ともEPWINGでの提供を考慮してほしいと私は強く願います。いい辞書は積極的に購入して買い支えますから!

【参考】

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