日本語ローマ字を実践する

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日本語をローマ字で書くときに重要な心構えがひとつあります。

それは、「ローマ字は英語ではない」ということです。平仮名で書こうが、ローマ字で書こうが、それは日本語です。日本語なのですから、日本語の表記法に則って書かなければなりません。

これは当たり前のように思われるかもしれませんが、しかし、人はしばしば、「英語話者が読めるかどうか」を気にしすぎることがあります。しかし、ローマ字は英語ではないのですから、訓令式であれヘボン式であれ、日本語ローマ字綴りの読み方の知識のない人には正しく読めません。それは特定のローマ字綴り方式の欠陥ではなく、本質的にそうであるということです。

確か、作家の佐藤亜紀氏のエッセイの中に、アメリカ滞在中に何度訂正しても名前のAkiを「アキ」でなく「エイキ」と発音されるので怒った、という話があったと思います。また、どこで読んだのか忘れましたが、「Kyoto」を「カイヨート」と読んだ人もあったそうです。どんな方式で綴ろうと、日本語のローマ字表記を正しく読むには日本語の知識が必要です。

これはどんな言語でも当たり前の話であって、例えば同じラテンアルファベットで書かれていても、ドイツ語とフランス語と英語では綴り方が違うので、それぞれの言語の知識がなければ読むことはできません。日本語にはまた日本語の綴り方があるというだけの話です。

日本語のローマ字表記というのは、日本語の知識のない人、特に英語話者が綴りだけを見て正しく発音できることを意図したものではないということです。それは日本語に限ったことではありません。スイスの心理学者のCarl Gustav Jungを英語風に読めば「カール・ギュスターウ゛・ジャング」とでもなるのかもしれませんが、正しくは「カール・グスタフ・ユング」と読みます。

それを前提として、ローマ字をいかに実践するかということを考えてみましょう。

元首相の小泉純一郎氏の名前「じゅんいちろう」を例にすると、訓令式とヘボン式とではそれぞれ次のように綴られます。

  • 訓令式: Zyun'itirô
  • ヘボン式: Jun'ichirō

見た目はだいぶ異なりますが、どちらも日本語のローマ字綴りとしては妥当なものです。ただ、パスポートの綴りと大きく異なることで何かトラブルが生じるのではないかと思って訓令式を避けてヘボン式の方を選ぶ人が多いかもしれません。ちなみに、パスポート式の綴り方のように「Junichiro」としてしまうと、日本語のローマ字綴りとしては「じゅにちろ」になってしまいます。

この例で問題になりそうな箇所を3点見てみましょう。ひとつは拗音「じゅ」、ふたつめははねる音(撥音)「ん」の後の母音、そして最後はのばす音「ろー」の部分です。

「じゃ」「じゅ」といった音にJの文字を使うのは巷間に広まっている認識だと思いますが、しかし以前の記事「拗音ローマ字表記のありがちな間違い」で述べたように、Jの字を使ってもヘボン式として正しくない綴り方をしてしまっているのを世間ではよく見かけます。(なお、アルファベットのJの字は言語によって発音が異なります。Jaと書くとドイツ語ではヤーと読みますし、スペイン語ではハのような発音になります)

はねる音「ん」は訓令式でもヘボン式でも基本的には n を使うので、上の例のように直後に母音字がくるときは区切る必要が生じます。それが上の例のアポストロフィ(')です。ただし駅名の表示ではこの目的にハイフンを使うことがあります。例えば東京の「田園調布」駅には「Den-en-chōfu」という表示があります。しかしこれは一見して分かるように、複数の単語(ここでは「田園」と「調布」)をつなぐためのハイフンとごっちゃになってしまって、うまい方法とはいえません。「Den-en」のハイフンが、「でねん」となるのを避けるためのハイフンなのか、それとも「でん」「えん」という2語(だったとして)をつなぐ意図なのかが字面からは分からないわけです。

そして長音を「ô」や「ō」のように表すことが必要です。これについては前の記事「パスポート式ローマ字の憂鬱」「長音符号つきのローマ字を入力する」に書いたので繰り返しませんが、第3第4水準辞書を使うとこれらの文字が入力できるということは繰り返し記しておきます。

さて、日本語のローマ字綴りで私にとって一番よく分からないのは、分かち書きの仕方です。これは私も自信を持っていうことができません。第一、文や長い語句をローマ字で書く機会が滅多にないので、分かち書きの経験を積む機会もありません。これは今後の課題としたいと思います。

最近、私がローマ字で日本語を記す機会が多いのは、Flickrにアップロードした写真に英語で注釈をつけるときです。例えば、東京都の大田区で撮った写真に「Ōta ward」といった説明を付けるといった具合です。これを「Ota ward」としてしまうと「オタ区」になってしまうので注意が必要です。Ōなどの文字を入力するのに、私は第3第4水準辞書を活用しています。皆さんも是非。

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