2012年4月アーカイブ

中公新書の『皮膚の医学』(田上八朗著)に、JIS第3水準漢字が出てきます。

中年で鼻や頰が真っ赤になる「酒皶(しゅさ)」という皮膚病に似ていますので、酒皶様皮膚炎と呼びます。

(p. 232)

「頰」が第3水準(1-93-90)の形で現れていますが、それはここでのメイントピックではありません。「皶」というちょっと見慣れない字はJIS第3水準、面区点番号1-88-70です。

第3第4水準辞書を使うと、「しゅさ」から「酒皶」に変換できます。皮膚病に関心のある方はぜひ第3第4水準辞書を使ってみてください。

医学関係の用語には、JIS X 0213の文字を含むことが時々あります。以前、健康・医療関係のテレビ番組に大きく「(せつ)」(第3水準、1-88-59)という字が映し出されていたこともあります。当ブログの記事「朝のニュースの第4水準漢字」には「痧」(第4水準、2-81-51)という字がテレビで使われていたことを記しました。そのほか、やまいだれを含む第3・第4水準漢字は多数あります。

医療・健康というのは昔からある文化の一ジャンルですから、それを伝える文字も豊富にあるわけです。

ちょっと用があって「貿易関係貿易外取引等に関する省令」というのを見ていたら、文字コード規格が参照されていることに気付きました。

この省令の中に「フレキシブルディスクによる手続」というくだりがあります。フレキシブルディスクというのは一般にいうフロッピーディスクのことだそうです。フロッピーディスクで手続きをするための決まりの中に、こうありました。

第五条  第三条のフレキシブルディスクへの記録は、次に掲げる方式に従ってしなければならない。

三  文字の符号化表現については、日本工業規格X〇二〇八附属書一で規定する方式

2  第三条のフレキシブルディスクへの記録は、日本工業規格X〇二〇一及びX〇二〇八に規定する図形文字並びに日本工業規格X〇二一一に規定する制御文字のうち「復帰」及び「改行」を用いてしなければならない。

元が縦書きのためか漢数字で書かれていますが、「日本工業規格X〇二〇八」つまりJIS X 0208を参照しています。文字の符号化表現はX0208の付属書1つまりShift_JISを用いることになっています。また、文字の種類として、X0201とX0208の図形文字全部、それにX0211の制御文字のうちCRとLFを用いなさいということです。タブを含んでいたら駄目なんですね。

しかしJIS X 0208を指定しているのがいかにも古くて不十分ですね。改訂された常用漢字表の「頰」とか「剝」とかが使えません。また、âやéといったアクセント記号つきのアルファベットも使えません。𧃴川(つづらかわ)𣖔木作(ほうのきざく)といった地名も表せないし、(みなもと)のような名字も表記できません。当ブログで色々紹介してきたように、JIS X 0208は不十分で、JIS X 0213を使う必要があります。

経済産業省はJIS X 0213をおしているということですから、まずこういう省令からJIS X 0213に改めてみてはどうでしょうか。

もっとも、この省令の場合、文字コード以前に、「フロッピーなんだ......」というところがつっこみどころかもしれません。

将棋に関するあるウェブサイトを見ていたら、「森けい二」という表記を見かけて、ああそうかと思い出しました。

雞二(けいじ) 九段は、将棋のベテランのプロ棋士です。将棋を覚えたのが16歳と遅かったことで知られています。1946年生まれです。

この「雞」の字はJIS第3水準、面区点番号1-93-66にあります。第2水準の「鷄」(1-83-17)のつくりをふるとりにかえた異体字です。仮名漢字変換から入力できなかったのか、「けい二」と平仮名で記しているウェブサイトがよくあるようです。

日本将棋連盟のサイトの棋士紹介ページでも、漢字を画像で表示しているところ以外では「森けい二」となってしまっています。このページは文字コードがShift_JISなので表現できないわけです。第3第4水準文字コードであるShift_JIS-2004やUTF-8を使えば、漢字で「森雞二」と表せます。将棋連盟には、ぜひとも第3第4水準文字コードの採用をご検討いただきたいと思います。

私が子供のころ、将棋雑誌でこの名前に初めて出会ったとき、見たことのあるような字だけども様子がちょっと違うので、印象に残ったのを思い出します。

ある日本のソフトウェア開発者がプログラムの中に適当に記した英語を見ていたら、searchという言葉の使い方を誤っているのに気付きました。

その例では、見付けたいものをsearchの目的語として記していました。例えば鍵を探すという意味を表すのに "search a key" とするようにです。これは誤りです。

こういう場合は、"search for a key" のように、for の後に探したいものが来ます。一方、searchの目的語は、探すべき場所になります。例えば "search a house" といえば、何かを見付けるために家の中を調べるということです。見付けたいものが家であるわけではありません。

辞書にはどう書いてあるか。

研究社の新英和中辞典には、searchの他動詞の説明として、「〈身体・場所などを〉捜す,捜索する」とし、注記に「【用法】 捜し求めるものが目的語にならない」とわざわざ書いています。

また、〔+目+for+(代)名〕という形で、「〈身体・所持品・場所などを〉〔...を見つけようとして〕くまなく捜す」という意味だと説明しています。見つけたいものは for の後にくるわけです。

自動詞としては、〔+for+(代)名〕という形で、「〔人・ものを〕(丹念に)捜す,捜し求める」という意味だとし、「【用法】 捜し求めるものが前置詞の目的語となる」と念を押しています。

「search = 検索する、探す」という意味はよく知られていますが、それしか覚えていないと、かなり高い確率で誤用しそうですね。こういうものは、フレーズで覚えるといいかもしれません。例えば、Yahoo辞書に載っている例に「search one's pockets for a key」というのがあります。これで覚えれば、上記のような誤りは犯さずに済むでしょう。

東京夜桜見物

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ここ南関東では、先週末にソメイヨシノの花が満開で、今は散りつつあるところです。ちょうど週末に見頃が重なったので、花見を楽しんだ人が多かったでしょう。

今回初めて、東京でも有名な桜の名所の千鳥ヶ淵の夜桜を見物してきました。何年も前に、昼間に桜を見に千鳥ヶ淵に行こうとしたことがあったのですが、最寄りの地下鉄の駅から既に行列が始まっていて、地上に出てほどなく警官が「人が多すぎるので通行止めとします」と叫んでいたので仕方なく引き返しました。人が多すぎで道路が通行止めなんて聞いたことがありません。それくらい人気の場所です。

Cherry blossoms at night / 夜桜

ライトアップされた桜を夜に見ると幻想的です。

Lighted up cherry blossoms / 夜桜ライトアップ

つながれたボートがアクセントになっています。

Cherry blossoms at night / 千鳥ヶ淵の夜桜

小高い展望台のようなところがあって、そこからの眺めがとても良かったです。人も多かったのですが、少し待ったら見物できました。

次の日の夜は、六本木ヒルズに行ってみました。ここには毛利庭園という庭園があり、桜の木が植えられています。その桜と高層ビルを組み合わせてみました。

Cherry blossoms of Roppongi Hills at night / 夜桜六本木ヒルズ

風があって少し寒かったですが、楽しめました。

Cherry blossoms of Roppongi Hills at night / 夜桜六本木ヒルズ

これは縦位置。どちらがいいでしょう?

この前テレビを見ていたら、画面に「濵田」という名字が映っていました。この「濵」の字はよく見るとJIS第3水準漢字です。面区点番号は1-87-27。第2水準の「濱」の異体字です。

何かの異体字の類いの第3・第4水準漢字は、見かけても当ブログにとりあげないことがしばしばあります。意味も読みも同じで取り換えのきく異体字よりは、第1・第2水準にない字種の方が重要だと思うからです。

それでも今回この字をとりあげようと思ったのは、テレビで見るより少し前に、スーパーの生鮮食品売り場でも同じ字を見かけたところだったからです。養殖の魚の生産者の名前を表示している中で、この濵の字が使われていました。

第3第4水準辞書を使うと、「はまだ」から「濵田」に変換できます。このブログ記事もそのように変換して入力しています。

それにしても、小さめのサイズの字だと「濵」と「濱」の区別はつきにくいですね。顔を画面に近付けないとよく分かりません。

テレビのスポーツ中継を見ていたら、「カンパツ入れず...」と聞こえてきたので、ちょっと残念な気持ちになりました。

「間髪を入れず」を「カンパツをいれず」と読むのはしばしば耳にしますが、誤りです。カンパツってどんな髪でしょう?

これは「(かん)(はつ)を入れず」と切って読むのが正しい。間に髪一筋ほども入らないという意味です。

大辞林第二版は、わざわざ、本来存在しない「かんぱつ (間髪)」という見出し語を立てて、次のように説明しています。

「間(カン),髪(ハツ)を入れず」の「間,髪」を誤って一語と解釈した言い方。→かん(間)

広辞苑第五版にはこういう便宜はありません。「間髪(はつ)を容れず」という成句として見出し語になっています。

ウェブから検索できる大辞泉では、「「間、髪を容れず」と区切る。「かんぱつを、いれず」「かんぱつ、いれず」は誤り。」としています。

私の記憶では、以前NHKテレビのアナウンサーが「かんはついれず」のように発音していて、「かんぱつ」としていないのはさすがNHKだと思ったのですが、「髪」のあとに「を」を入れないと不自然な感じがします。

「かん、はつをいれず」と5回くらい繰り替えして言えば、正しい言葉遣いがだんだん馴染んでくると思います。

また面白い本にであいました。御手洗瑞子『ブータン、これでいいのだ』(新潮社)。

著者は1年間ブータン政府の首相フェローとしてブータンに住んで働いています。その体験に裏打ちされた、抽象論でない、等身大のブータンを描いた本です。

本書がいいのは、生のブータンをよく観察していることだと思います。政府機関で働いたから情報にアクセスしやすかったというのもあるのかもしれませんが、日常的なことも細かく記されています。

たとえば、iPhoneを買った友人やiPadを買おうとしている上司とか(彼らの給料は日本円にして2~4万円くらいだそうです)から、ブータン人とお金の問題を語ったりとか。物価が上がって経済が過熱気味な中で月給ぐらいもする流行のモバイル機器をホイホイ買うブータン人、というのはあまり我々の持っているブータンのイメージではない。けれども、著者の意見では、こうしたことは最近急に変わったのではなく、ブータン人が元々持っている性質によるものではないかとしていて面白いです。

ブータンは別に理想郷でもなんでもない、現実の問題を抱えた現実の国であるけれども、現代の日本人から見るとかなりの異文化であることは間違いないようです。そうした記述を単純に楽しんでもいいし、あるいは日本人の生き方にとって何か参考にすべきではないかという風に読んでもいいでしょう。日本人はもう少しブータン的になってもいいかもしれませんね。あまりなっても困りますが。

本書の題の「これでいいのだ」のこころは最後の章に書かれています。いろいろ問題を抱えていながらも幸せ力の強いブータン人。これでいいのだ、という自己肯定力は、現代の日本人にとってヒントとすべきところかもしれません。

「敷居が高い」という言い回しがあります。辞書を引くと、下記のような説明があります。

不義理・不面目なことなどがあって,その人の家に行きにくい。

(三省堂「大辞林 第二版」)

不義理または面目ないことなどがあって、その人の家に行きにくい。敷居がまたげない。

(岩波書店「広辞苑 第五版」)

ところが実際には、このような意味で使われていることはごく少ないのではないかと思います。私自身はこの意味で使われている例を思い出すことができません(文学作品などにはあるかもしれませんが、日常的に接する会話や文章でということです)。

ウェブでこの言葉を検索すると、次のような説明が出てきました。

[補説]文化庁が発表した平成20年度「国語に関する世論調査」では、「あそこは敷居が高い」を、本来の意味である「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」で使う人が42.1パーセント、間違った意味「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」で使う人が45.6パーセントという逆転した結果が出ている。

(敷居が高いの意味 - 国語辞書 - goo辞書)

本来の意味で使っている人が42%もいる感じはしないのですが、さてどうでしょう。

私は、不義理などが関係しないときには、「敷居が高い」を避けて、「ハードルが高い」のような言い方をしています(参考: ハードルが高い)。しかしもうそういう配慮は不要なほど、すっかり意味が変わってしまっているのでしょうか。

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