2012年3月アーカイブ

以前本屋でパラパラと見て、ああ面白いなあと思ったのだけどそのときは買わなかった本が、最近また店頭に並んでいたのでパラパラと見ていたら、今度は何か因縁を感じて買ってしまいました。コリン・ジョイス『「ニッポン社会」入門--英国人記者の抱腹レポート』(NHK出版)。

本書が何といっても良いのは、観察眼が鋭いことだと思います。日本人が何気なく見過ごしていることがこう見えるのかと感心させられます。長年日本で仕事をしたからこその多くの具体例がふんだんに盛り込まれています。

外国を観察するというのは、下手をすると自分の元々持っていた偏見に合う材料ばかりをことさらに見てその偏見を強化してしまうということも、ないではありません。本書の著者はそういう罠に陥らず、虚心坦懐に観察し記述しており、好感が持てます。

もちろん単なる日本礼賛ではなく、疑問は疑問のままに提示しているのも興味深いところです。全体としては、理知的なユーモアと愛情の感じられる、面白い本になっています。楽しめること請け合いです。

著者は「日本語の学習はものすごくたいへんだった」と記していますが、日本人にとって英語を学ぶのもそれくらいたいへんなのだと、母国の人たちに広めてほしいものです。

1990年代後半、JIS X 0213の開発が行われ、一般からも文字用例の募集が行われていた頃、私が調べていた本のひとつに、斉藤国治『古天文学の散歩道』(恒星社)があります。

古天文学とは聞き慣れない言葉かもしれません。これは、昔の文献の中の星や天文現象についての記述を手がかりに、これまで知られていなかった事実を導き出していくことをいうようです。本書のまえがきに挙げられている例では、古代の楔形文字の書かれた粘土板を解読したところ、年代記なのだが具体的な年が分からない。ところが、ある日の明け方の空に4つの惑星が集合して見えたという記述があり、これを手がかりに計算すると、それが実際に起こった年月日が判明した、ということです。

本書は、枕草子や太平記からシャーロック・ホームズに至るまで、いろいろな文献の天文記述の科学的な考察を、一般向けの読み物としたものです。

で、この本の中に、JIS X 0208にない漢字がいくつも現れているのです。JIS X 0213に含まれているものはたまたま全部第3水準漢字でした。

  • p. 65: 氐(てい)宿 の「氐」 面区点 1-86-47
  • p. 75: 熒惑 の「熒」 面区点 1-87-61
  • p. 99: 褒姒 (ほうじ)の「姒」 面区点 1-15-79
  • p. 100: 涇(けい)水 の「涇」 面区点 1-86-75
  • p. 122: 睎(のぞ)み の「睎」 面区点 1-88-84
  • p. 155: 羅睺(らこう)星 の「睺」 面区点 1-88-88

(複数に現れるものは最初の箇所を示しています)

氐宿というのは古代中国の星座のようなもので、熒惑というのは火星のことです。

天文分野でJIS X 0208にない文字なんてそうそう無さそうに思うかもしれませんが、古文献が絡むと出てくるわけです。

ここでとりわけ面白いのは「睎(のぞ)み」という例。これは、古典文献に出てきた用例ではありません。現代のアマチュア天文家が、すばるの星食の観測の際に作った漢詩の中に出てきたものです。該当の行を引用すると、「秒を読み独り睎(のぞ)みみる望遠鏡」。漢詩の新機軸であるのかもしれません。漢詩にも天体観測にも通暁している大変な教養人であるのは川崎天文同好会の箕輪敏行さんという方だそうです。

本書にはJIS X 0213にない字も1文字だけあり、それはp. 104の「廣 + 刂」でコウと読む漢字です。虞コウという、古代中国の梁の人物名として出てきていました。(どうも、ページに書き込んだメモと私の記憶からすると、この用例は公開レビューの時に提供していなかったかもしれない...)

ちなみにこの本では、作字か何かの際の間違いなのか、活字がすってんころりんして行から転がり落ちた具合に印刷されてしまった箇所があって興味深かったです。

北海道にいた学生時代に天文サークルに入っていたこともあって、私はたぶん普通の人よりは天文現象を多く見ていると思います。といっても、本格的にやっている人から見たら全然少ないとは思いますが。ともあれ、今まで見てきた天文現象で特別に印象に残っているもののベスト5を考えてみました。

  • 第4位 (同点): ヘール・ボップ彗星(1997年)、百武彗星(1996年)

立て続けに大変明るい彗星がやってきたのを両方とも第4位としました。百武彗星は長く伸びた尾が特徴で、ヘール・ボップ彗星は私が見た中で最も大きな彗星でした。

肉眼等級まで明るくなる彗星はたまに現れますが、これほど立派な姿を見せるのはなかなかないことだと思います。

  • 第3位: シューメーカー・レビー第9彗星と木星の衝突 (1994年)

二十数個に砕けた彗星の破片が次々と木星に衝突するという、それまで聞いたこともない現象。何か見えるのかどうかも不明なまま望遠鏡を木星に向けたわけですが、木星の表面に黒々とした衝突痕が小型の望遠鏡でもくっきり見えたのは衝撃でした。木星の自転とともに見え方を変えていき、時によっては3つの痕が同時に見えたことも。こんな現象を見ることは、生きているうちには二度とあるまいと思います。また、ちょうどインターネット(≠ウェブ)の普及期でもあり、大学のワークステーションでNASAのFTPサイトからハッブル宇宙望遠鏡による観測画像をダウンロードしたり、FAQがNetNewsで出回っていたりしたのも懐かしい思い出です。

  • 第2位: しし座流星群 (2001年)

まれに見る大出現となった2001年のしし座流星群。一つずつ数えることが困難なほど次々と流れる様は壮観でした。あまりにもたくさん出現するので、流星を見るのが飽きてくるという罰当たりな感じを抱くまでになりました。それまでに見た流星の数をこの一晩で軽く超えたことでしょう。こんなことは生きてるうちに二度とあるまいと思います。

  • 第1位: タイ皆既日食 (1995年)

これは本当に素晴らしい体験だったし、幸運でした。皆既日食が世界的に人気を集めるのが実感として理解できました。幸運というのは、皆既の数分の間にもし太陽に雲がかかったら台無しだったのが、そうはならなかったということです。長く伸びたコロナと輝くダイヤモンドリング、暑いタイの大地に吹き抜けたさわやかな風と熱い歓声を私は忘れません。

皆既日食は、遠征できる状況と天候の運に恵まれればまた見ることもできるでしょうが、さてどうなるでしょうか。

20年来の久保田利伸ファンの私ですが、最近はシングルとして発売された「声にできない」をよく聴いています。この曲は本当に良い。

歌詞の最後の方に "I'm missing U" というくだりがあります。それを聴いてふと、この歌は21世紀の「Missing」として作られたのではないかと、ふと思いました。

「Missing」といえば久保田の初期の代表曲として有名です。ただ、本人は、いつまでも「Missingの人」と思われるのを潔しとしないのか、この歌を封印していたという話を聞いたこともあります。

「声にできない」は、歌われている心情が「Missing」に近いものがあります。「Missing」に取って代わる曲として作られたのではないか......という、私の想像です。それがあたっているかはさておくとしても、「Missing」に取って代わる名曲としての資質は十分にある、良い曲だとはいえると思います。

疋田智、小林成基『自転車はここを走る!』((えい)出版社)を読みました。著者は二人ともNPO法人自転車活用推進研究会というところに所属しています。

そもそもこんな題の本が出版されなければならないということ自体、日本の交通行政の問題をアリアリと物語っているといえます。はっきりいって異常事態だ。

でも現に自転車の走る場所が問題になっているので、きちんと解説されなければならないわけです。

本来、「自転車はどこを走るのですか」と聞かれたならば、「車道の左側です。以上」で済むはずなのです。が、いろいろな理由で、それだけでは済まなくなっています。

「いろいろな理由」に何が含まれるかというと、

  • 1970年代、車道上の自動車が増えたために、緊急避難的に自転車の走れる歩道というものを設定した。これが諸悪の根源。
  • 緊急避難的な措置であったはずがズルズルと常態化し、今や自転車通行可能かどうかも気にせずに自転車が歩道を走るようになり、それが人々の間に定着してしまっている。自転車利用者の意識の問題。
  • 道路の整備の上で自動車のことしか考えてこなかったため、自転車を始めとする軽車両では通行しにくい(ないしはできない)交差点などがある。行政による道路や信号の整備上の問題。
  • 自動車運転手にも、自転車が車道を走るものだということを知らない人がおり、自転車に対して危険な運転をする人がいたり、自転車の走行スペースである車道左端を路上駐車で塞いだりする。自動車運転手の問題。
  • 文字通りに解釈するとかえって危険だったり非現実的だったりする条文が道路交通法にあったりする。法律の整備の問題。

......とまあ、どこから手をつけていいか分からないくらいの状況なわけです。その中にあって自転車をきちんと活用しようとするならば、自転車の乗り手自身が、法律や道路整備の現状をよく理解して、本当に安全で効率的な自転車の走り方とはどういうものなのかを考えないといけないのです。

本書は机上の空論でなしに、自分で実際に自転車を乗りこなしている著名な著者らが具体例をふんだんに挙げて、今日の日本の道路の走り方を指南するものです。面白くないはずがない。

日本で自転車に乗る人は全員この本を読んだ方がいい。心からそう思います。自転車販売店で、自転車を売るときに本書も一緒に売ってはどうかと思います。そうすれば、自転車を正しく乗る人が増えるはずです。

今の私の願いは2つです。

ひとつは、自転車に乗る人がみな本書を読んで、正しい自転車の走り方を身につけること。

もうひとつは、自転車で車道を走りやすい道路整備が進んで、本書が不要になることです。

今の日本はいろいろな問題を抱えていますが、その背景には共通の性質があるように私には思われます。ここでは3つ挙げてみましょう。(なお、さっき思い付いたことなので、あまり根拠はありません。あしからず)

  • 現状維持という病
  • ゼロリスク指向という病
  • 強者・大衆・既得権に迎合する病

現状維持というのは、今までこうだったから変えたくない、これからも同じでいいだろうということです。変えない方が良いこともありますが、環境の変化に対応できなくなってしまうこともあります。

ゼロリスク指向というのは、リスクがあってはならないとする非現実的な考え方です。ものごとには良い面も悪い面もあるのが普通ですが、それを受け入れられない。少しでもリスクがあるなら受け入れられないという、硬直化した思考にとらわれると、何もできなくなってしまいます。リスクがあるなら、それを抑える方策を立てれば良いのですが。しかもしばしば、客観的・論理的な分析ではなく、事実に基づかない印象・イメージだけでリスクがあると認識されがちです。

強者・大衆・既得権に迎合するというのは、何か物事を是正しようとしたときに、それに反発する強者や既得権者に逆らえない、迎合してしまうということです。今日の大衆消費社会では大衆も一種の強者ですから、ここに含まれます。

これを現実の問題に当てはめて検討してみると、以下のようになります。

例えば、震災被災地の瓦礫の受け入れの問題。放射能が怖いという論調が出てくる(ゼロリスク指向)。声の大きい大衆に逆らえない(強者・大衆・既得権への迎合)。結果として、現状維持となってしまい、処理が進まない。

例えば、自転車の歩道走行の問題。自転車は車両であって車道を走るものなのに、歩道を走っているので事故が起こっている。これを改めようとすると、本当は自転車は車道を走った方が対自動車でも視認性が高まって安全であるのにかかわらず、自転車が車道を走るのは怖い・危険だという主観的印象的なイメージによる論調が出てくる(ゼロリスク指向)。さらに、車道を我が物顔で走ったり路上駐車したりして既得権を得ている自動車運転手や、車道を走ったことのないママチャリ市民の声に逆らえない(強者・大衆・既得権への迎合)。いま自転車が歩道を走っているので、現状維持でいいだろうということになる。何も改善されない。

例えば、文字コードの問題。JIS X 0208の問題を解消するJIS X 0213という規格ができたのに採用が進まない。新しい規格を採用するのは面倒だ、考えたくない、という現状維持指向。新しいものを採用してトラブルがあったらどうするというゼロリスク指向。大手OSベンダが採用していないのだからいいだろうという、強者・既得権への迎合。結果、従来の問題が温存される。

これらのほか、消費税でも年金でも、同じような構造を持つ問題が多いのではないかと想像します。

こうした病へのひとつの処方箋は、本当に大事なことは何か、本質的なことは何か、普遍的な価値観に合致するか、をよく考えることだと思います。現状維持という枠組み、ゼロリスクという制約、強者の既得権を、いったん前提から外して、本当に大事なこと、本当のこと、普遍的に価値のあることを考えてみる。

といっても、これまでなじんだ考え方が一朝一夕に変わることはないでしょうから、本当に大事なことを考えるトレーニングをしていくことが必要なのだと思います。

過去に、下記の2つの記事を書きました。

このシリーズの仕上げは、「第3第4水準文字コードを使おう!」です。

第3第4水準文字コードとは聞いたことがないかもしれません。私も言うのは初めてです。

ここでいう第3第4水準文字コードとは、JIS X 0213の文字をサポートする文字コードです。JIS X 0213はそれ自体が文字コードの規格ですから、JIS X 0213の符号化方式は当然第3第4水準文字コードですが、それ以外にも、Unicodeの符号化方式も第3第4水準に対応しています。

ですから、第3第4水準文字コードとは具体的には下記のような文字コードです。

  • EUC-JIS-2004
  • Shift_JIS-2004
  • ISO-2022-JP-2004
  • UTF-8
  • UTF-16
  • UTF-32

第3第4水準辞書を使って文字を入力するには、こうした文字コードの使用が前提となるわけです。これまでに第3第4水準の辞書とフォントを取り上げましたが、それに先だって、実は第3第4水準文字コードが必要だったわけです。

残念ながら、現状ではいつでもどこでも第3第4水準文字コードが使われているわけではありません。下記のような文字コードは、第3第4水準に対応していませんがいまだに使われています。

  • Shift_JIS (および、それにベンダ定義外字を付加した所謂Windows-31Jなどの亜種を含む)
  • EUC-JP
  • ISO-2022-JP

今後は、こうした不十分な文字コードの使用をやめて、第3第4水準文字コードに移行すべきです。

なんとなれば、JIS X 0208が許されるのは小学2年生までなのだし、電子書籍時代にはJIS X 0213の文字が必要だということを前に述べました。また、このたび改正されたJIS X 0208とJIS X 0213の附属書をよく読むと、改訂された常用漢字表により良く対応するにはJIS X 0213の文字が必要であることも分かります。

あるコラムサイトで、「補塡」という言葉の第3水準の「塡」を記すのにHTMLの文字参照を使用しているのを見かけましたが、第3第4水準文字コードを使えばそのようなことは不要で、「補塡」という文字そのものを記すことができます。

様々な点から、第3第4水準文字コードの使用が望まれているわけです。

私はTwitterのつぶやきを見て知ったのですが、JIS X 0208とJIS X 0213がともに、この2月に改正されていました。

といっても、技術的な内容の変更はありません。まあ、今さら変更されても困るので、これで良いのでしょう。

では何が改正されたのかというと、規格の中で常用漢字表を参照している部分について、2010年の常用漢字表の改正に対応して、適宜変更されたということです。

新たに、規格と常用漢字表との対応を記した附属書が付け加わっています。大体の文字は、文字と読みと区点番号が記されているだけなので特に面白みは無いのですが、「剥-剝」のような微妙な文字については注釈がつけられているので、そういうところを味わってみるのがひとつの楽しみ方でしょう。

今回の改正は、X0208, X0213とも、追補の発行という形をとっています。規格票が丸ごと新しくなるわけではなく、変更点を記した追補が別文書として発行されているわけです。X0208は最初の追補ですが、X0213は2004年のに続く2つめの追補です。

今回の改正による変更点は、日本工業標準調査会(JISC)のサイトの「JIS検索」で、PDF形式で閲覧することができます。ただしこのサイトではPDFの保存や印刷はできません。手元にとっておきたい場合は、日本規格協会(JSA)のサイトから、紙の冊子またはPDF版を購入することができます。JISCのサイトもJSAのサイトも、規格番号から検索できます。

ところで、JIS X 0213:2004で追加された「表外漢字UCS互換」のうち、「剝」や「𠮟」は表内字になったわけですが、そこのところの名称は変更ないんですね。まあ別にいいですけど。

日経BP社のサイトに、「地道な手間の積み重ねで大きな見返りも? ネット副業は本業とのバランスに注意!」という記事が出ていました。ネット副業のいくつかの手段を紹介するものです。

「中には、ネット副業だけで月100万円以上の収入を得ている人もいるという」などと書いて人の気を引いています。しかし世の中うまい話はそうそうないもので、そういう高額な収入を得る事例は、もしあったとしても相当な手間と時間と才覚を要しているはずでしょう。

そんなことを思いながらパラパラと見ていたのですが、ちょっと私の気を引くくだりがありました。アマゾンを使って始めた古本売買の副業が高じて本業になってしまった人のエピソードにこうあります。

実際の古書店は本好きの多い都会ほど有利だが、ネットの世界に入るとすべてが逆転する。全国に点在するマニアが顧客になり得るからそのハンディはないし、地価など在庫コストの面でも地方の方が有利になるからだ。

ここには、いわゆる地方が東京に勝つためのヒントがあるように思います。

ネットならば人口の少ない拠点からでも全国の顧客にリーチできる。さらに、土地代のようなコストが低く抑えられる。

土地がたくさんあるとか人件費が安いとか、そういうメリットと、ネットの伝達力・アクセス力をかけあわせれば、東京の企業に勝つための武器になるのではないか。

これで思い出したのですが、以前「北海道の二面性」という記事でさくらインターネットの石狩データセンターの事例に言及しました。これは、たくさんの土地を安く利用できてなおかつすぐ隣に大都市札幌があるという、石狩の土地の利点を上手に活かした例だといえるでしょう。その土地に潤沢にあるものは何か? を追求して、そこから得られる価値(この場合は安価なデータセンター)をネットで供給しているわけです。

タイトルを「東京に勝つ方法」としましたけれども、逆に、東京の企業が地方を活用する方法ととらえてもいいでしょう。いまや、東京近辺に視野を限定する必要は無いわけです。

日食は古代から人の心をとらえてきた天文現象です。地球規模で見れば頻度としては決して珍しくない現象なのですが、今年は注目すべき日食が二つあります。

ひとつは、今年5月21日に日本で観測できる金環日食です。

部分日食は太陽の一部だけが欠ける日食、皆既日食は太陽全部が隠される日食ですが、金環日食は、月がすっぽり太陽の中に入ったような格好になって太陽がリング状に見える日食です。太陽と月と地球の位置関係によってこういうことが起こります。

今回の金環日食は、関東地方から東海、近畿、四国、九州南部と、結構広い範囲にわたって観測できる、日本人にとってかなり好都合な条件です。

ただあまり好都合でないのは、金環になる時間が午前7時半前後と、朝の通勤・通学時間帯と重なることでしょうか。この日は平日・月曜日です。

日食を見るには、安全のための準備が必要です。太陽の威力というのは大変なもので、たとえ9割が欠けていても目にダメージを与えるのに十分ですから、信頼の置ける観測グッズを用いることが必要です。ガラスに蠟燭のすすをつけてとか、黒い下敷きを通してとかいったことを記憶している方もおられるかもしれませんが、昔聞いた常識はいったん忘れましょう。

日食のときは、ピンホールカメラの原理によって木漏れ日が日食の形になることが知られています。私も過去の日食でその現象を見ていますが、金環になると木漏れ日も「◉」のような形になるのでしょうか? そんなことも確かめてみたいと思います。

金環日食について詳しくは、アストロアーツのサイトなどをご覧ください。

さて、今年もう一つの注目の日食は、11月14日にオーストラリア・ケアンズで見られる皆既日食です。ケアンズは観光地としても知られ、日本と時差がないので、有力かも! と最初は思いました。

ところが、この皆既日食の特徴は、観測可能な陸地がほぼケアンズとその周辺に限られること(ほかは海上)、それからそのケアンズでは朝早くに皆既となることです。太陽高度も低いようです。

ということで、限られた観測可能な場所に世界中から日食マニアが押し寄せるのではと考えられます。

最近まで旅行会社のツアーの情報も詳しくは出ていなかったのですが、近畿日本ツーリストの情報がようやくアップデートされたり、ほかの旅行会社にもあるようです。行ってみたい人は、こうした、飛行機も宿泊施設も押さえてあって観測場所も下見しているようなツアーに乗っかっていくのが、今回の場合一番良いのではと思います。

うまいこと見られれば、皆既日食は大変に感動的なイベントです。過去に皆既日食を見た経験からして(←さりげなく自慢!)、それは保証できます。やる気のある人は挑戦してみてください。Good luck!

テキストエディタとしてEmacsを長年使っている人の間でも、意外と知られていなかったりするようなので、Emacs上で動く私のお気に入りのツールをここに紹介しておきます。

Emacs上で動作するスケジュール管理ソフトとして、mhcというものがあります。これが今回ご紹介したいツールです。

mhcの特徴は、Emacs上のメーラと連携して動作することです。Emacsの上ではMewやGnus、Wanderlustといったメーラが動作しますが、こうしたものと連携し、メールで受け取った予定を簡単に管理できます。

仕事の打ち合わせの日程や、宴会の予定などがメールで送られてくることがあるでしょう。例えばこんな感じです。

Subject: 進捗報告会

次回の進捗報告会を下記のとおり開催します。
 日時: 3月13日 15:00
 場所: 第1会議室

こういうメールを受け取ったら、mhcでは、このメール自体をスケジュールとして取り込むことができます。メールはMewなどのメーラで見るわけですが、メーラの上からmhcへの取り込みのコマンドが実行できます。

メールを取り込むキー操作を行うと、賢いことにmhcは上記のようなメールを解析して、日時が「3月13日15時」であること、場所が「第1会議室」であることを推測します。あまり規則的でない書き方のメールでは推測がしばしば外れて手作業で入力しないといけなかったりしますが、まあ、推測が完璧である必要はないので。

必要に応じてSubjectを編集して保存操作をすると、mhcはこのメールをスケジュール用のフォルダにファイルします。

保存されたスケジュールを見るには、1ヶ月のスケジュールを閲覧する画面にSubjectが表示されるので、見たいエントリにカーソルを合わせてスペースキーを押すと、ちょうどメールを見るのと同じ具合に、閲覧できます。メーラとうまく融合しているのが巧みなところです。

メールで会議などの予定を受け取る人には、大変便利なツールです。私は仕事で毎日活用しており、スケジュール管理に手放せません。

もちろん、メールから取り込む以外にも、自分で一からスケジュールを作成することもできます。その場合もあたかもメールのように取り扱われます。

Emacs上のメーラを使っている人は、ぜひ試してみてほしいと思います。つい最近できたものではなく、10年以上前からある、実績のあるスケジュール管理ツールです。

旅行に電子書籍を持って行くのは良い考えです。かさばりませんし、端末1台に何十冊でも入ります。旅先でそんなに何十冊も読むわけじゃないと思われるかもしれませんが、読みたい本をその場で選べるというのはメリットです。蔵書を丸ごと持ち運ぶことをイメージすると良いでしょう。

私も最近、旅行に行くときはSony Readerを持って行っています。

この前、北海道に行ったときも、持って行きました。

北海道に行くのには飛行機に乗っていくわけです。羽田空港から飛んでいきます。暇なフライト中に読もうと、Readerを鞄から取り出しました。

それで気付いたのですが、電子書籍端末というのは、れっきとした電子機器であるわけですね。ということは、機内でいちいちアナウンスがかかるとおり、離着陸時には電源を切っておかなければならないわけです。全ての電子機器は使用できません、といってるわけですから。電子ペーパー採用のSony Readerとはいえ、やはり離着陸時にはシャットダウンしておかないといけないのでしょう。

いちいち電源をオン・オフしないといけないのはちょっと面倒です。それに、離着陸の暇な時間に読めないというのも困りものです。そういうヒマ時間のためにこそ持ってきた電子書籍だというのに。

という話をちょっとTwitterに書いたら、アメリカの国内線ではKindleを使っているのを乗務員が見ても何も言わなかったというようなエピソードが寄せられたりもしました。とはいっても、規則は規則なので、やはりまずいのではと思います。

たとえ「書籍」という名前がついていても、どこまでいってもコレは電子機器なんだなあと認識した次第でした。

この前、ある酒のラベルに、「じゅう」という音をローマ字で記すのに「jyū」と書かれてあるのを目撃しました。この書き方はおかしい。

「じゅう」をローマ字で綴ると、訓令式に従うならば「zyû」、ヘボン式ならば「jū」となります。くだんのラベルは、ヘボン式のつもりで書いたのに余分な「y」が入ってしまったように見えます。

もっとも、こうした間違いは、結構頻繁に見かけます。かなりあるといってもいいかもしれません。

例えば、プロ野球選手が「SHINJYO」と綴っていた例があります。ヘボン式ならば(長音についてはひとまずおいておくと)「SHINJO」とするはずのところです。もっとも彼は、アメリカに渡ったときには「SHINJO」としていたようです。

また、札幌の街で見た案内表示に、「北1条」をローマ字で「Kita 1 jyō」のように書かれていたのを見た記憶があります。これもyが余計です。

どうも、我々の頭の中には「拗音にはyの字が入るものだ」という認識があるのかもしれません。拗音の綴りが「子音+y+母音」と構成されるという概念があるとしたら、それはそれで一貫していて論理的だといえるかもしれません。

面白いことに、こうした、ヘボン式の拗音に余分なyが入る現象は何も今始まったことでなく、昭和5年に発行された田丸卓郎『ローマ字國字論』(岩波書店。初版は大正時代)にも取り上げられています。

田丸は、ジャジュジョといった音を日本式(のちの訓令式のベース)では3文字要するところヘボン式では2文字であることについて触れ、「三字づつで書くのが吾々の心持から云つても寧ろ自然で、それが煩はしいといふ感じを生じない。現に看板や廣告などにジャジュジョなどを jya jyu jyo などと書いてあるのが珍しくないのはこの自然の心持を證明して居る」(強調引用者)としています。なんと、当時からこうした表記は見られたんですね。

だから、「jyu」や「jyo」のごときは、間違いではあるものの、伝統的な間違いといえるのかもしれません。

JIS X 0208は日本の文字を符号化するために1970年代に開発された文字コード(符号化文字集合)規格で、いくつか問題はあるものの、これまでよく使われてきました。

今日でも、内部的な符号化表現がUnicodeになっても、使える文字のレパートリーとしてはJIS X 0208に基づいていることが多くあります。例えば、フォントを作成する際に、JIS X 0208の第1・第2水準漢字をサポートするということが多くあります。

しかし、それでは不十分です。

上に、「いくつか問題はあるものの」と書きました。この「問題」の最たるものは、文字が足りないという問題です。この問題は早くから意識されており、1990年制定のJIS X 0212の開発につながりましたし、それはいまひとつだったというので2000年制定のJIS X 0213の開発の動機となっています。

今や、JIS X 0208の問題点を解消するJIS X 0213という規格があるのですから、日本語環境はそちらをベースにすべきです。

フォントについても、JIS X 0213で追加された第3・第4水準漢字をサポートすべきです。

幸い、近年のPCにバンドルされるフォントはJIS X 0213の文字に対応しています。Windows Vista/7やMac OS Xに同梱のフォントは、JIS X 0213の文字をサポートしています。(文字コードとしてJIS X 0213に対応しているかというとそれはまた別問題なのですが、その点はまたいつか)

これで、現代日本の文字が問題なく情報機器で使えるようになってめでたしめでたし......かというと、そうでないのが残念です。PC以外の情報機器では、JIS X 0213の文字がサポートされていないことがしばしばあります。例えばスマートフォンもその一つです。タブレットや電子書籍端末も問題です。以前「Sony Readerはホッケを食べられるか」という記事を書いたことがありました。有力な電子書籍端末が第3第4水準漢字に対応していないのは残念なことです。

ぜひとも、こうした携帯情報機器や電子書籍端末の開発元におかれては、JIS X 0213の文字をフルサポートするようお願いしたいところです。

また、PCにおいても、Windows XPを素のままで使っていると、第3第4水準漢字に対応していません。まだXPを使っている人も多いと思います。そういう場合は、下記のようなフォントをインストールして、第3第4水準に対応しましょう。

第3第4水準漢字は、漢字マニアや研究者といった特殊な人のためではなく、現代日本で普通に文字を使う私たちのような人のためのものです。第3第4水準フォントが全ての情報機器に行き渡って、いつでもどこでも使えるようになることを強く希望します。

電子書籍で東直己『探偵はバーにいる』を読んでいたら、JIS X 0213で追加された記号が2種類出てきたのが目につきました。

現れた記号は、トランプのハート記号の白黒両方です。「♡」と「♥」です。これらの記号は、他のトランプの記号と同様、JIS X 0208には入っていなかったのですが、JIS X 0213で追加されました。面区点番号は、「♡」が1-6-29、「♥」が1-6-30です。第3第4水準辞書を使えば、「はーと」から変換して入力可能です。

私が読んだ電子書籍はXMDFフォーマットのものです。XMDFがどんな形式なのか私は全く知らないので、この電子書籍においてハート記号がどういう形で表現されていたのかは分かりません。もしかしたら外字扱いされていたのかもしれません。もしXMDFがJIS X 0213に対応していたならば、外字扱いせずに普通の記号と同様に単なる文字として扱えたことになります。

ちなみに、少し前に公開された大泉洋主演の映画「探偵はBARにいる」の原作となったのは、本作ではなく、本作の続編『バーにかかってきた電話』なのだそうです。

拙著『プログラマのための文字コード技術入門』が再度増刷されるという連絡がありました。

2年前に発売された本ですが、売れ続けていることを嬉しく思います。

この増刷で、また、本書を必要としている人のもとへ届けられる機会が増えたことを嬉しく思います。

文字コードに悩む人がいる限り、本書にお手伝いできることはあるはずです。私の本が誰かのお役に立てるということが、著者として最も嬉しいことです。

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