歌舞伎の「近江源氏𨉷講釈」(おうみげんじしかたこうしゃく)の最後から3文字目の「𨉷」という字は、おそらくこの歌舞伎にしか使われない漢字ではないかと思います。JIS X 0213では第3水準、面区点1-92-41、UnicodeではCJK統合漢字拡張B、U+28277にあります。
この漢字は『新聞電子メディアの漢字』(横山詔一、笹原宏之、野崎浩成、エリク・ロング)の頻度調査では、最下位の頻度1ではなく頻度2と、用途の特殊さにしては意外に健闘しています。また、JIS X 0213で第4水準でなく、より頻度が高いとされた第3水準なのも意外な感じがします。
これは私の単なる憶測に過ぎないのですが、筒井康隆『影武者騒動』の影響によって頻度が押し上げられているのではないかと思います。『影武者騒動』は「近江源氏𨉷講釈」を元ネタにした作品です。
この作品によってとりあげられることがきっかけとなって、同じ作者が「噂の真相」誌に連載していたエッセイ『笑犬樓よりの眺望』(新潮社より単行本として刊行)に同作品について記すことによって「𨉷」という字が使われています(新潮社単行本p.393)。また、上演された『影武者騒動』の評が朝日新聞に掲載されたということから、紙面にも「𨉷」の字が使われた可能性があります。
ウェブで検索すると『影武者騒動』とは無関係に「近江源氏𨉷講釈」の題が記されたペーシもあることから(そんな場合「𨉷」は外字扱いですが)、この歌舞伎の題が単独で新聞紙面に出た可能性も勿論ありますが、上記『笑犬樓よりの眺望』によるとこの歌舞伎は現在上演されていないそうなので、その可能性はあまり高くないように思われます。
上記はあくまでもよく調べていない単なる憶測に過ぎないのですが、現代の作品にとりあげられることによって古い作品の漢字が使われることはあり得そうな気がします。もしかするとこれからも。
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