JIS X 0208にはトランプの記号がない

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2つ前の記事に思い出話を書いたので、ついでに関連した話をひとつ。

MZ-2500という8ビット機では、漢字VRAMを登載していて、英数字と同様、テキスト画面に普通の文字として漢字を表示することができました。ただし、漢字を使うモードと非漢字のモードとがあります。

非漢字モードというのは、その頃の8ビット機によくあった、JIS X 0201の片仮名の隙間に図形描画用の四角や丸などの記号をいろいろと埋め込んだ文字コードを用いるものです。つまり、1バイト文字オンリーで、JIS X 0201の英数字・片仮名と、独自の図形が扱えるというものです。ゲームなどにはこうした図形がよく使われていました。

一方、漢字モードは、シフトJIS方式でJIS X 0208とJIS X 0201を扱うものです。非漢字モードにおける四角や丸の図形は、漢字モードではシフトJISの第1バイトに相当するので、これらは排他の関係にあります。漢字モードにすると非漢字モードの図形は使えなくなるのです。

非漢字モードの図形には♠や♥のようなトランプの記号もあって、ゲームによく使われていました。8ビット機ではゲームくらいしかやることがないので、こういう図形が重宝されていたわけです。しかし、ゲームでも漢字や平仮名が使えた方がいいに決まっています。そこで漢字モードでゲームを作ろうとすると(当時はゲームというのは作るものでした)、なぜか困ったことが発生します。非漢字モードでは使えていたトランプのマークが、漢字モードではどうやっても出てこないのです。JIS X 0208にトランプの記号がないせいですね。

文字数の多い漢字モードの方が、トランプの記号がないというのは、理不尽な感じがしたものです。JIS X 0208初版を策定した人たちは真面目すぎてトランプなんて思い付きもしなかったのでしょうか。

それよりずっと後、2000年になって、JIS X 0208の拡張であるJIS X 0213には、めでたくトランプのマーク一式が、黒塗りと白抜きの両方、つまり♠♤♣♧♥♡♦♢の8種類、収録されました。

当時のパソコン少年がJIS X 0213を使えたら良かっただろうにと思います。性能の低い8ビット機でも、JIS X 0213の実装水準3 (つまり漢字集合1面のみ)くらいはいけたのではないかと想像します。昔のパソコンのエミュレータを開発している方は、独自にJIS X 0213対応させてみるのも一興ではないかと思います。

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MZ-2500の「性能が低い」か否かは別として、MZ-2500の漢字ROMは256KiBのようです(http://www5f.biglobe.ne.jp/~Tan-Lee/k-room/mz-25.html による)。JIS X 0213の文字数は第4水準を除くと8797文字ですから、16×16ドットの文字データをビットマップで保持すると274KiB強になります。残念ながら当時の漢字ROMには入りきりません。第3水準の1249文字だけならぎりぎりで入りますが、この場合はトランプのマークは入らない事になります(または非漢字の659文字だけなら入るが第3水準は入らない)。

徳丸さん、情報ありがとうございます。微妙なところで容量不足みたいですね。あと、性能が低いと書いたのは、今から見てというつもりでした。当時の8ビット機としてはMZ-2500は大変強力だったと思います。

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