ダブルハイフンと中点

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本多勝一『日本語の作文技術』を見直したら、中点とダブルハイフン(二重ハイフン)の使い分けについて述べたくだりがあって、実にもっともなのだがなかなか実践できないものだと思いました。

使い分けとはどういうことかというと、今日の日本語文書では中点「・」の用法として、文中に語句を並列にならべるのと、人名など複数の語からなるものの区切りとが混在していて、支障があるので、後者にはダブルハイフンを用いることでこの支障を解消しようということです。

つまり、「フランス・ドイツ・日本」のような点の使い方と「バラク・オバマ」のような使い方とは明らかに異なるのに、両方の意味に同じ記号を使うのは良くないと。これでは、上の例の日本をトリニダード・トバゴにかえて「フランス・ドイツ・トリニダード・トバゴ」と書くと具合が悪い。すると考えられる解法としては読点を使って「フランス、ドイツ、トリニダード・トバゴ」にすれば良いというのもあるけど、読点は文の構造を示すために使うものだから、文全体のレベルで見たときには同種の問題をやはり引き起こしてしまう。ならば、読点は文の構造のため、中点は語句を並置するために使い、語の中の区切りはダブルハイフン「゠」を使うことにすれば解決する、ということです。

これにしたがうと「バラク゠オバマ」とか「アラン゠チューリング」とかいった書き方になる。別に人名でなくてもよくて、「トリニダード゠トバゴ」のように国名その他の固有名詞でもいいわけです。こうすれば上の例は「フランス・ドイツ・トリニダード゠トバゴ」のように書き換えられ、区切りに紛れがない。

と、理屈はわかるのですが、なかなか実際には踏み出せない感じがしますね。ひとつには、コンピュータで書くには従来の文字コードのJIS X 0208にはダブルハイフンが入っていなくて、JIS X 0213を使う必要があるのだけど、まだあまりJIS X 0213が一般的でないということがあります。Shift_JISにかえてShift_JIS-2004が普及していればよかったのですが、まだそうなっていない。ダブルハイフンはJIS X 0213の面区点番号1-03-91、SJISでは829Bです。

ダブルハイフンをイコール記号で代用するということも考えられますが、きちんとした印刷物ではイコールとダブルハイフンは活字が使い分けられているので、あまり代用はしたくない。ダブルハイフンは、「ハイフン」とつくだけあって、ハイフンと同程度の長さをとるようであり、イコールより短いことが多いようです。上記『日本語の作文技術』でも、「イコール」と「二重ハイフン」(ダブルハイフン)は別の記号として列挙され、印刷上の形も違いが見てとれます。

ダブルハイフンでちょっと気になるのは、今日の印刷物では「ジャン゠ジャック・ルソー」(Jean-Jacques Rousseau)のように、ダブルハイフンと中点を使い分ける場面が見られることです。上の本多式を採用するとこの使い分けができなくなることになりますが、それはいいものかどうか、ちょっとわかりません。

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